全身を使ってパワフルなボールを打つならオープンスタンスだ

 小牧さんの悩みは、スクールでテニスを始めた方に共通の悩みで、相談をよく受けます。
 というのは、スクールでは初心者と言うと、女子も年配者も、そして小牧さんのようなスポーツマンも同じクラスでグループレッスンを受け、同じフォームで打つ打ち方を習うからです。
 画一的な指導は、指導者にとっては楽ですが、生徒にとっては才能の芽をつんでしまうことになりかねません。私が所属していた桜田倶楽部で真っ先に取り組んだのは、共通の基本は教えるがフォームは強制せず、個性を伸ばすというやり方でした。松岡修造たちの個性豊かなフォアハンドは、このような背景があったのです。
 小牧さんのようなスポーツマンなら、トッププロのようなパワフルなフォアハンドを打ちたいと考えて当然です。読者の皆さんから見て、下の杉山愛プロの写真と小牧さんの打ち方と、どこが一番違うでしょうか。それは、杉山愛がオープンスタンスで打っている点です。小牧さんの悩みを解決する処方せんは、ずばり「オープンスタンス」の習得です。なぜなら、クローズドスタンスで打とうとすると、同じマシンからのボールのちょっとした変化でさえ、写真6と写真10の違いのように、ステップで対応しなければならないからです。小牧さんが、このように全身を使うことができれば、本人が納得されるスイングとなるだけでなく、実際にパワーのあるボールが打てるのです。

 

オープンスタンスの打法はハンマー投げによく似ている

 ハードコートのように球足の速いコートで、色々なボールにタイミングを合わせ、しかも小牧さんが希望しているように、腰や肩のひねりを生かしたパワーのあるボールを打つのは、とても難しいのです。オープンスタンスでの打法は、ちょうどハンマー投げで最後にハンドルを放す瞬間に似ています。
 身体の背後にボールがある時点では、腰や肩が完全にひねられており、そこから身体のねじれを戻しながらボールを前方に呼び込み、身体が投げる方向に正対した時点で、ハンドルを放すのです。
 そして、この瞬間に、身体のひねりや足の蹴りのすべての力をボールに集中させています。上体と左足の動きが重要で、ハンドルを放す時のおヘソが向いている方向にボールは飛んで行きます。

 

  
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