STEP1  ボールを運び、転がして上体のねじり戻しを体感する

 まず、上体のひねりの動作をマスターしましょう。図1のように、両足を軽くひらいて座ってください。そして、身体の真後ろにメディシンボールを置きます。メディシンボールがない場合は、ビーチボールに水を入れて重くしたものか、バスケットボールでもいいでしょう。足は動かさないで、上体をねじって両手でボールを取り、両手で床の上を引きずりながら脚を越えて、おヘソの前方まで運んでください。
 そして、今度は、この逆にやはり両手を使って前方のボールを身体の背後の元の位置に戻してください。ゆっくりと動作を行ない、上体の動きをマスターして欲しいのです。スムーズにできるようになったら、前方にボールを止めるのではなく、後方から運んだボールを前方に転がしてください。身体の真正面で、できるだけ遠くまで転がすには、どんなタイミングでボールを放せばいいのかを体得して欲しいのです。真っ直ぐ狙った方向に、連続して10回コントールできるようになるまで行なってください。

上身のねじれを使ってボールを真後ろから前へ運ぶ

オープンスタンスをマスターするために、まず上体のひねりの動作を体感しよう。メデシンボールを使って図のようにボールを真後ろから前へ運ぶ。次に、身体の真正面で、できるだけ遠くまで転がそう。どんなタイミングでボールを話せばいいのかを体得する

 

STEP@ コート上でメディシンボールを使ってキャッチボールを行なう

 今度は、コーチまたは友人とペアになり、ネットをはさんでサービスライン上に両足を置き、足を肩幅くらいにひらいて立ってください。そして、メディシンボールを両手で身体の真後ろに支え、そこからドリル1と同じように身体のねじれを戻しながら、右足(小牧さんの場合は左足)で強くコートを蹴って、ボールを相手の胸元めがけて投げてください。クローズドスタンスに慣れている小牧さんの場合には、最初はなかなか狙うところに投げられないことでしょう。しかし、腰とヒザ、そして左利きの小牧さんの場合は左足の蹴りをうまく使えば、距離の調節や方向性も良くなることがすぐおわかりになると思います。お互いに、キャッチしたらすぐ投げ返すという動作で、図のB1、B2、B3の場所で連続して20球(10往復)キャッチボールができるまで行ない、今度はお互いにポジションを変えて練習してください。

腰、ヒザ、足の蹴りを使ってボールを目標めがけて投げる

友人とペアになり、ネットをはさんでサービスライン上に立ってボールのキャッチボールを行なう。ドリル1と同じように上体のねじれを戻すことを実感しながら行なって欲しい

 

STEP3 セミウエスタングリップに変えて実際にボールを打つ

 今度は相手に球出ししてもらって、実際にボールを打ってみましょう。小牧さんの場合には、今のグリップからセミウエスタンの厚いグリップに変えてください。両足を肩幅にひらき、左足の前にラケットを縦に置き、左手でラケットをつかんで上げれば、自然にセミウエスタンのグリップになります。バックスイングの時にラケット面が下を向くことがおわかりでしょう。ベースライン上に、ドリル2と同じ要領で立ち、オープンスタンスでボールを打ちます。グリップを変えたので、今までと同じ高さを狙うとネットして当然です。ネットよりうんと高いところを狙って打ってください。力を入れて振り切れば振り切るほど、トップスピンがかかり、従来より高いところでネットを越えても、力強いボールがコート内に入ることを知って、驚かれることでしょう。小牧さんのお気に入りのプレーヤーの打ち方を真似るのが上達の早道です。
 1球ごとにグリップをチェックしながら打ち、連続して10球、アレーに入るようになるまで練習しましょう。打点が、今までよりうんと前になることがわかるはずです。
  小牧さんには、「インターネット テニスジャパン」のビデオクリニックNo2が役に立つと思います。
ドクターからひとこと!
段階的な練習でスタンスを応用の効くオープンスタンスに変えよう

 今回は、スクールに通っていらっしゃる方の悩みを取り上げました。
 小牧さんのフォームを見ると、まとまって安定していることがわかる反面、より力強いショットを打つことには不向きだということがわかります。これは、画一的な指導が原因です。小牧さん自身は身体を十分使い切れていないと自覚しつつも、現在のテニスの主流であるオープンスタンスを教わっていないばかりに、打っても満足がいかないというわけです。画一的な指導方法は、指導する側にしてみれば、とても楽なレッスン方法ですが、教わる側には悩みが増すばかりです。ひいてはテニスの持つ楽しみも消えてしまいます。コーチの方は、この点について是非考えて欲しいものですね。
 さて、身体がクローズドスタンスに慣れてしまった小牧さんが、オープンスタンスタンスを習得する方法として、今回は3つほど紹介しました。まず、ボールを使って上体のねじれを体感してもらい(ドリル1)、次に実際のコートでボールのキャッチボールをすることで、目標に向かって投げるタイミングをつかんでもらいました(ドリル2)。そして、最後に、セミウエスタンに握りかえて、アレー部分に打つ練習を勧めました(ドリル3)。
 このように段階別の練習をすることで、オープンスタンスにおける身体の使い方を覚えていくのです。もし皆さんがオープンスタンスの良さに気づき、クローズドスタンスから変更したいのなら、同じドリルに取り組むと習得できるはずです。是非トライしてみてください。


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