ビデオ分析でわかった「コート全体を使わない」致命的なミス

分析1 対戦相手はていねいにコースを打ち分けるタイプ

 この日に対戦した相手は、強いボールは打たないものの、萩原さんのバックを主体に時々フォアとバックへの短いボールを交えて、コースを打ち分けるプレーヤーです。
 お互いに息づまる長いラリーの連続で、エースを取る場面はほとんどありません。相手は、サービスを入れるだけの、典型的なベースラインプレーヤーですが、ラリーのやりとりでは常に主導権を握り、萩原さんを左右前後に振っているシーンが延々と映っています。
 萩原さんは、足を生かしてよく拾って粘っており、1−5からサービスをキープして3−5まで挽回。しかし、逆転には至らなかったという試合でした。

 

分析2 勝敗は技術だけで決まらない。ゲームプランが大切

 どうして負けるのか、ご自身でもわからないというのが本当のところでしょう。
 このような時、ほとんどの一般プレーヤーは、萩原さんの相談にも書かれているようにショットが打てないとか、フットワークが悪いといった技術的なことに原因を帰そうとするものです。
 しかし、我々コーチはまったく逆の見方をします。というのは、技術をアップさせるのは、時間を要しますし、その場でどうこうするわけにはいきません。何よりも、勝敗は技術だけで決まるものではないからです。また、相手にどんな戦略や戦術でプレーするのかといった、いわゆるゲームプランが大切だということを知っているからなのです。

分析3 コートの半面しか使っていないことがビデオで判明

 この試合も、いわゆる技術的にはサービスも足も速い萩原さんの方が上です。しかし、試合は終始、相手のペースで終わっています。なぜ、技術的には上の萩原さんが相手のペースに振り回されるのでしょうか。
 この萩原さんの例は、ビデオクリニックが大きな力になれる典型的な例と言えます。答えをズバリ言いましょう。「萩原さんはコートの半面しか使っていない」のです。つまり、戦略上の大きなミスを犯しているのです。相手にバックを打たせようと、バック側にボールを集めるのですが、相手はそれを読んで、ほとんどフォアにまわり込んで、萩原さんを振り回す結果になっているのです。
 コート全体に入れる相手と、その2分の1、いや4分の1に入れようと必死になっている萩原さんでは、萩原さんの方にミスが多く出て当たり前です。

 


   
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