偽装が不十分だとショットが良くても決められるのが現実だ

 金野さんのフォアハンドのショットが、相手に決められることが多いのはなぜでしょうか。
 それは、偽装が不十分で、相手にボールを読まれてしまっているからです。金野さんの代表的なフォアハンド(写真1〜4)とロブを上げた時の写真(写真5〜8)をご覧下さい。構えから、横向きになる時点までは両者に差がなく、相手はパッシングショットが来るのかロブが来るのかは予測不可能です。
 しかし、それ以後をよく見比べて下さい。パッシングショットの場合には、スクエアに立って、ボールを捕らえて振り抜いています。ところが、ロブの場合には、腰を落としてラケットを背後で引き、ヒザをうんと折って、ボールを捕らえて打っています。皆さんが対戦相手だったら、最初の1、2球は抜かれても、これほど異なっていると、パッシングかロブかを読むことができるようになってしまうことでしょう。
 そして、金野さんの場合、パッシングにおいても、クロスとダウンザラインを身体の向きを変えて打ち分けるため、身体の向きでコースがわかってしまうという欠点が見られます。
 このように、実際の試合では、球筋やコースをわからないように偽装することがとても重要なのです。トッププロのフォームを見ると、この点がよくわかると思います。
 それでは、さっそく金野さんの矯正に取りかかりましょう。

 

トッププロは球筋やコースをわからないように偽装する

 今から20年近く前のことですが、私が日本のテニスの根本的な欠陥を思い知らされたのも、この点でした。練習の時ははるかに上手に見える日本の選手が、いざ試合になると、対戦相手の外国人選手に、ボールを捕らえる前から走らされ、一発をくらってしまうのです。日本では、フォームを重視し、身体の向きを変えてコースを打ち分けるように教えていたため、相手にコースを読まれてしまっていたのです。その後、私が同じフォームで打点の違いによるコースの打ち分けを教えるようになったのは、このきっかけがあったからです。

 

金野さんが試合に勝つためには、ショットに偽装を施す必要があります。具体 的に言うと、オープンスタンスのパッシングショットとクローズドスタンスのロブを覚え るのです。つまり、どちらのスタンスからでも両方のショットを打てるようにすることで す。このようにすれば、相手に簡単に読まれることはありません   金野さんはパッシングショットを打つ時、スクエアあるいはクローズドスタンスでボールを捕らえています。ところが、ロブはオープンスタンスで打っており、これでは、最初の1、2球は成功してもすぐに読まれてしまいます

 


   
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